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レナウンインクス いわき事業所は、1969年設立の靴下編立て工場。(株)レナウンの自社工場として、福島県いわき市に設立された国産靴下の高品質なモノづくりを担う拠点だ。日本国内では稀少になってしまったメンズ靴下の中でも特にビジネスソックスを得意とし、工場内で編立てから製品化までの一貫生産工程を持つことで品質の安定を実現。日本ファッション産業協議会が行う“J∞QUALITY認証事業”における企業認証も取得している。
百貨店向けのライセンスブランドやオリジナルの「イルレガロ」など高付加価値品を主力に、年間100万足の靴下を生産。「イルレガロ」は、天然素材で伸縮性が無いため、編立てること自体が難しいとされていた麻100%のメンズソックスを実現させ、日本靴下協会が優れたレッグウェアを選出する第20回靴下求評展において「経済産業省製造産業局長賞」を受賞している。ネクタイのように、全体の印象を足したり引いたりして変えられるアイテムとして、デザインと履き心地を兼ね備えた逸品だ。
真に履き心地の良い靴下は熟練職人の経験と技術で、幾通りもある組み合わせの中から、最適なバランスで編み立てられたもの。つま先部分は敏感な足指がつねに接しているため、仕上げには特に繊細さが求められる。上質な靴下にはつま先を閉じる加工にリンキング縫製が用いられており、この縫製は、つま先の開口部の編み目を職人がひと目ずつ針に引っ掛けて縫い合わせていくため、縫い目がフラットになりゴロつきなく、靴を履いた時にも不快感がない。
ここで生みだされる製品は国際レベルの品質と環境への配慮とともに、職人の持つ優れた技術に裏打ちされ、多種におよぶ新旧の豊富な編み機とハンドリンキングを駆使した多品種小ロットの生産体制や、職歴40年を超えるベテラン職人とその技を継承する若手の職人、ここで働く女性たちがひとつのチームとなって支えている。
工場内では世界的にも数少ない240Nハイゲージ(一見編み目の分からない、細かく密に編み込まれた状態になる)の編み機をはじめ、4タイプ18種におよぶ新旧の編み機種を保有。編み機の中には30年以上前に導入したものもあり、今となっては動かせる技術者も少なくなっているというダブルシリンダー機(凹凸のある編目を表現)が多いのも特徴。
中でもアーガイル柄などを編むことに特化した”X(エックス)マシーン”(インターシャ編み機=アーガイル柄などさまざまな柄を編む手法)と呼ばれる機械は、年代的には旧式であるにも関わらず、柄を再現する緻密さ、性能、構造などに優れ、20数年経っていてもこれを超える性能を持つマシーンはいまだに出ていないそう。
新しい機械であれば、データのやりとりのみで海外生産でも同じものはできる。しかし、これら旧式の機械はネジの回し方ひとつで風合いが変わってしまう。そのため長年携わってきた職人の経験による微調整(3/100mm=ネジを90度回すか回さないか程度の差)と日々のメンテナンスによって他では真似出来ない逸品を仕上げることができるのである。
機械一台一台が持っている個性を知り、状態を見極め、手に取るユーザーに満足してもらう商品を目指して、日々、試行錯誤を続ける。その姿には利便性、生産性の面だけではない靴下づくりへの真摯な想いを感じずにはいられない。だからこそ「イルレガロ(=工場からの贈り物)」は生まれた。つねに新しいことにチャレンジし、「アイデアを生み出す職人魂」がそこにはあるのだ。
ビジネスマンにとって重要なアイテムは、なにもスーツや時計、革靴ばかりではない。靴下も同じくらい重要で、見ている人は見ているもの。靴下は消耗品であるが、海外では、「ソックス」「ホーズ」と、呼称からうかがえる通り、靴とは切り離された装うアイテムである。履き心地や色柄などを見極めて選び楽しみ、今一度、自信の足元のお洒落にも気を配っていたいではないか。