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ジャケットの着脱時に大事なポイント、それは袖通しの良さ。スベリの良い裏地は、着脱時のストレスを軽減するだけでなく、着用中も体の動きを拘束せず、軽く快適な着心地を与える。
旭化成のキュプラ繊維「ベンベルグ」は、コットンから生まれた再生セルロース繊維。「すべり性」「吸放湿性」「制電性」「ドレープ性」に優れ『天然繊維のやさしさ』と『化学繊維の機能性』を持ちあわせたエコ素材である。
1931年の操業開始から80年余りの歴史をもつベンベルグの糸は宮崎・延岡市の旭化成ベンベルグ工場で生産され、国内外の産地へ送られる。その中の1つに古くからシルクの産地として有名な山梨・富士吉田市がある。ここはベンベルグ裏地発祥の地であり現在も当時から変わらず『先染めベンベルグ裏地』が生産されている。
ベンベルグ延岡工場から届いた原糸はそのままではデリケートでバラけやすいため先染めの糸として使えない。そのためまず撚糸工程で糸に撚りをかけて扱い易くするところから始まる。ボビンに巻き替え、綛(かせ=糸を束ねたもの)にして、次工程へとつながる。「撚糸は機械だけどすべて手作業。硬すぎず柔らかすぎず、微妙に変化する湿度や温度を管理しながら」。綛揚げは撚った糸を輪の状態に巻きあげる工程。こちらも手作業によるもの。同じように見える機械もそれぞれにクセがあり糸の状態の微妙な違いを長年の感覚で感じながら作業をこなしていく。 どちらの工程も手間はかかるが、それを惜しまず、最良の状態で次工程へとバトンを渡す。
なかでも染色工程には生地発色の良さを引き出すきれいな水が必要となる。ここ山梨には富士山をはじめ美しい山景が広がり、忍野八海に代表される澄みきったきれいな湧水があることでも知られる生産地。その自然の恵みを受け、染められた糸は美しい光沢を発する。
整経は、織物の重要な工程の内の一つで、(ヨコ糸を入れる前)タテ糸を引き揃えて製織できる状態にする工程のことをいう。柄によって糸の並びをさまざまに変化させ、糸の張り具合を調整していく。綛状の糸をボビンに巻く機械がいくつも回っている様は、まるで流水を受ける水車のようでもあり、ゆったりとした流麗な川を想起させる。
そしていよいよ製織工程にて、整経されたタテ糸にヨコ糸を通し生地が織られていく。さまざまな織り柄を表現できるジャカード繊機には紋紙と呼ばれる、デザイン、模様、柄をパターン化したカード(型紙)が使われている。電子化され、より高速で動く織機もあるが、他工程にもあるように昔ながらの機械を現在でも工夫を凝らしながら使い続けることで、独特の高級感、立体感のあるやさしい風合いを生み出す。
織られた生地は、最終の整理工程へと送られ、精錬、乾燥、熱処理などを行い、生地の柔軟性、耐久性、色合い、風合いを高め、検品後、梱包されていく。
こうして生産されたベンベルグ裏地は縫製工場に送られこだわりのあるスーツに仕立てられ製品となる。着るヒトのことを想い、環境のことを想って。。。
旭化成の祖業であり世界オンリーワン素材でもあるキュプラ繊維「ベンベルグ」。自然から生まれ、次代へと続く最先端の繊維でありながら、分業によって支えられ、地域に根付いた職人たちの持つ昔ながらの技術を用いて作り出されている。そこに至るまでには多くのヒトが介在し、まさしくヒトの手によって紡がれている繊維なのだ。
“すべての瞬間に、上質な心地よさを”届けるために旭化成の挑戦は続いていく。