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1948年、今から半世紀以上前に東京の下町で誕生した『前原光榮商店』。
独自のコンセプトによる洋傘づくりに励み、大量生産ではなく、生地や天然の木材を使用した手元などひとつひとつ洗練された部品を使って創られる『こだわり』のある傘として知られる。その傘づくりにおける情熱は、皇室をはじめ数多くの方々に愛され、日本を代表する傘メーカーとして日本の職人技術を生かしたメイドインジャパンにこだわったものづくりがなされている。
昭和38年(1963年)には従来から製造していた16本骨の傘を大幅に改良し、前原光榮商店の代名詞といわれるまでになり、現在は3代目の前原慎史氏が創業当初のコンセプトに沿った傘づくりを続けている。
傘には、主要なパーツが4つある。「生地」「骨」「加工」「手元」がそれだ。「傘」という文字の中に4つある「人」は、それぞれの工程を支える欠かせない要素と考える前原光榮商店。100を超える手数を経て仕立てられる手作りの傘には、各工程を担う職人の魂が宿う。
「生地」にはシルクの産地として名高い山梨県産の織物を傘用に(防水)整理加工された上質な生地が使用されている。「骨」も木を削りだして作ったステッキのような中棒に、生地を支える骨、傘を開いた状態や閉じた状態で維持するための「ハジキ」などを付けて作られる。なかでも「加工」では、織り上がった生地を裁断していくのだが、この時に使うのが、職人手作りの「木型」。傘の形はこの段階で決まる。型によって三角形の形が変化し、その組み合わせで傘になるからだ。同じ16本骨の傘でも、木型が違うと全く別の形に仕上がる。開いた時にどれぐらい丸みを持たせるかなど、仕上げたい形や骨の数に合わせて職人はそれぞれに適した型を使い分ける。
生地を骨に張り付けることから「張り屋」と呼ばれる前原光榮商店の加工職人は、鷲山さんをはじめ皆がこの道60年以上のベテラン傘職人。東京に過去100人いたという職人の数も今や10人と世代交代が進まない現状がある。外注仕事の多い職人の世界ではあるが、同社では社内に若い30代の職人がいる。本社の4階工房で働く田中さんがその一人。
職人が作った傘を手にした際、その作りに感動したことをきっかけに入社。職人の下に1年半ほど通い詰めて、1日中同じ作業をすることから始め現在キャリアは3年ほど。生地の裁断からハンドル付け前までのプロセスをすべて一人で担当している。
裁断し分けられた1枚1枚の生地を張り合わせる際に使用するのが、単環縫いミシン。上糸1本だけで縫っていく特殊なミシンだ。こうして縫い合わさった生地を骨に取り付けていくのだが、生地や骨の材質によって張り感が異なるため、ある程度の完成形に近い傘の状態にしなければその良し悪しがわからない。裁断、縫製、露先という骨の先端に被せるキャップを付け、中綴じと呼ばれる生地を骨に固定する手縫い工程を経てはじめて検証ができるのだ。型の精度を高めるためにはミリ単位の調整が必要であり、こうした緻密かつ繊細な作業の繰り返しが前原光榮商店のクオリティを支えている。『面倒だといって手間を省くことは必ずどこかで歪みを生む、面倒なことを真剣に取り組むことが重要です』と田中さんは話す。
最後に「手元」。手元は傘の表情を豊かにしてくれる重要なパーツのひとつ。木材によって様々な方法で「曲げ」を行い、曲げられた素材には主に天然の染料を数回にわけて何度も繰り返し塗ってきれいなツヤを出していく。この手間を掛けた塗りが使えば使うほどに艶を生み深みが増していく。また、竹など一部の曲げ加工は本サイトでも取り上げた柘パイプに依頼。工程がパイプづくりと似ている部分もあり異業種の方が仕上がりが細かく感覚的な部分も含めて良いそうだ。
こうして仕立てられていく1本の傘。使用される1つひとつのパーツが意味を持ち、そのすべてが手作業により取り付けられている。洗練された美しさと機能性を兼ね備えた前原光榮商店の傘は、この全ての融合なしでは得られない。手にとればそのフォルムの美しさ、上品なデザインに感動を覚えるはずだ。
またカスタムオーダーにも対応。手元(ハンドル)、生地、骨の組み合わせから自由に選択ができる。ネーム刻印も可能なため、文字通り自分だけのオリジナル仕様の傘を手にする喜びを感じてみてほしい。
傘の良さは使ってこそわかるもの。傘を開いて、生地を軽く叩くと、太鼓のようないい音が響く。その傘で雨の音を楽しんでほしい。雨の日の憂鬱な気分が楽しみへと変わることだろう。
<カスタムオーダーについて>
手元(ハンドル)、生地、骨の組み合わせから自由に選択可能
※基本的にお電話やメールでのカスタムオーダーはご対応しておりません。直接ご覧頂き質感や大きさなどをご実感いただきながらご注文していただきたいためです。ご遠方の方やどうしてもショールームにお越しいただけない方は一度ご相談くださいませ。