メンズ雑誌の名物編集長たちに訊くこれからのドレスアップのありかた。第一回は、今、世界でもっともリッチな男達に読まれていると聞くシンガポール発のメンズマガジン『ザ・レイク』の松尾編集長。
西新橋のサラリーマンの昼飯事情から世界の富裕層の好みまでを知り尽くす編集長、日本の男のドレスアップは、東京など都市の再開発とともに花開くという独自の説を展開する!・・・・・・ホスト林 信朗敬白
林ーーー今回からスタートします。日本のメンズファッション誌の編集長シリーズ 第一弾として「THE RAKE」編集長の松尾さんにインタビューいたします。
THE RAKE について
林ーーー松尾さん、よろしくお願いいたします。では「THE RAKE」のご紹介をお願いできますか?
松尾ーーー「THE RAKE」は 2008年にシンガポールで英語版が創刊されました。創刊者はウェイ・コーという人で、シンガポールの裕福層向けに発刊しました。弊社が日本版のライセンスを取得して、発刊したのが2014年からになります。コンセプトとしては、欧米の裕福層の方々のライフスタイルを取材して、それを日本の読者にお届けしていくという形でやっております。
ファッション遍歴
林ーーーそれでは、スーツやテーラリングにお詳しい松尾編集長ご自身は、どういうようなファッション遍歴を重ねてらっしゃったんですか?
松尾ーーー古くは 世代的にぼくはDCブランドなんですよ。その更に前は ホットドッグプレスやポパイなどを読んでいた世代なので、もちろんメンズクラブもかじりましたし、そういったところから入ったんですが。一番最初に入社した男子専科は、いわゆるヨーロッパのテーラード文化や、当時ヨーロピアンと呼ばれていたヨーロッパ風の服を中心に扱っていたので、そういったところから本格的にファッションの勉強を始めたという感じです。一大転機というか、私の編集者としての方向性を位置付けたのは、MEN’S EXという本に入って、クラシコ・イタリアというものに出会ってからです。
林ーーー落合正勝先生ですね。
松尾ーーー今でも良く覚えていますが、落合先生がMEN’S EXの創刊2号目のコラムで初めてクラシコ・イタリアという言葉を使われて、今まで全く知らないクラシックなイタリアンファッションの世界で、それまで、そういうものはあったんですが、マスコミに載るということはなかったんです。落合先生は それを再発見して、世の中に紹介されました。今のテーラードに繋がるクラシックなイタリアンファッションというものに初めて触れて、それから、ぼくはずっとそれ一本槍ですね。当時、落合先生がしつこく仰っていた男の服には普遍的なスタイルがあるんだという言葉は
そんなことないだろうと当時は思っていたんですが、実はそれが正しかったんです。
クラシコ・イタリアとは
林ーーーこのインタビューで初めて松尾さんや私の話を聞く人も多いと思うんです。クラシコ・イタリアってなんだ?っていう質問が湧き上がると思うんですね。
ちょっと簡単に教えていただけますか?
松尾ーーークラシコ・イタリアというのは、元々の言葉の意味は、イタリアにあったクラシックなテーラードクロージングのブランドの協会みたいなものなんですね。それが元々の意味なんですが、現在日本や世界でもっと広義に解釈されているのは、イタリアに昔からあるクラシックなクロージングということです。じゃあ、クラシコ・イタリアの一番の違いは何か?元々 スーツはイギリスで生まれたもので、鎧的な発想から作られているので、どうしてもガッチリと厳つく見せる。肩パッドなどもたくさん入っていて硬いんですが、それに対して、イタリアのスーツというのは軽いんですね。軽くて柔らかいというのがイタリアのクラシッククロージングの最大の特徴で、いかにスーツの形をきっちり見せながら、パッド的なものを省いていって。でもキチッと見えるというものを追求していったのが、イタリアのテーラードの歴史です。ものすごく大雑把に言うと、最近では日本でもヨーロッパで学んだテーラーが帰ってきて、マリオ・ペコラの佐藤英明さんなんか先駆けだと思うんですけど、そういうイタリア風の柔らかいスーツというものを作り始めたんですね 。20年くらい前からですが。それが日本の気候風土に合っていて、しかも雑誌のネタ的にも面白かったというところで、ブームが始まって、それがブームで終わらず今まで続いているというのがクラシコ・イタリアの流れですね。
アドバイス
林ーーーそこでね、ビジネス的なスーツの選び方は置いておいて、新しいスーツスタイルを目指そうという方に「こういうものを選ぶと良いよ」「こういうスタイルが良いよ」というような「THE RAKE」流のアドバイスはありますか?
松尾ーーー林さんを前にして、こういうことを申し上げるのは大変僭越なんですけれども、個人的に思うのは、やっぱり一回ちゃんとしたテーラーで、作られた洋服というものを着て欲しいなと思います。やっぱり既製品と比べると元々の作りが違うというか、色々な発見があって、元々洋服はこういうものだったということが分かると思うんですね。一回、数十万円クラスのテーラード。いわゆるオーダーメイド、ビスポークで作ったスーツや靴を体験なさっていただきたいというふうに思いますね。着心地も全然違いますし。何より物としての存在感というか、既製品とは全く違うので。
林ーーーそういうことも経験すると、既製服などに対する見る目も変わってきますよね。
松尾ーーーそうですね。良いものを見て体験すれば、既製服を選ぶ際にも活かせます。既製服が悪いという訳ではなく、既製服にはたくさん良いところがあるので、そういったものを選ぶ際に自分に似合うものが分かるし、良いものを見分けられるようになると思います。
アフターファイブのドレスアップ
林ーーー普段はビジネスウェアとしてしかスーツを着ないという多数の人たちも日本にはいると思うんです。だけれども、タウンユーズみたいな、そういうスーツの着方、使い方も楽しいですよね。
松尾ーーーそうですね。アフターファイブにこそドレスアップをするべきだと思っていて。アメリカでもヨーロッパでも、向こうの人って昼間は意外といい加減な格好をしていても、夜になるとビシっとスーツで決めてディナーやパーティーに行くということが昔からありますよね。日本人も アフターファイブにこそドレスアップをするような習慣が根付くといいなと思っています。最近、職住接近みたいなことが言われていて、都内の富裕層の方は意外と都内に住んでいることが多いんです。昔は田園調布や成城学園でしたが、今は都内のタワーマンションに住まわれているので、だから、すごく職場と家が近いんですよね。私が知っている方でも、仕事が終わった後、一回家に帰って着替えてまた出て来る、ということをなさっている方がポツポツ出てきているので、これからもっともっとポピュラーになるのではないかと思います。
林ーーーいいお話ですね。
<撮影協力>
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<出版>
今、世界でもっともリッチな男達に読まれていると聞くシンガポール発のメンズマガジン
THE RAKE JAPAN EDITION(ザ・レイク ジャパン・エディション)