Q.「デスクワークの日のドレスコードは?」
山本晃弘(以下、山本):今ですね、働き方改革という事の流れの中で、快適に仕事を進めていきたいっていう事で、カジュアル化が進んでいるような気がします。それでクールビズやウォームビズも、そういった流れもあったと思いますし、昨今ですと、例えば銀行もカジュアルオッケーというような号令も出ているところもあるとニュースで読んでいますけれども、仕事として人に相対さない、プレゼンテーションがありませんよ、今日はデスクワーク中心ですといったときの着こなしのカジュアルって、どのあたりまで許されるものですかね?職場にもよるんでしょうけど、私すごく考えるのが、職場の仲間を仕事の相手と考えるのか、仕事の仲間と考えるのかによってその装いも違ってくるのかなとは思うんですよね。
大草直子(以下、大草):難しいですね。もしかしたら、中間位なのかなあとは思いますけれどもね。ただ自分が朝から晩までずっと原稿書く、座って本当にトイレと昼食に立つくらいで、ずっと座ったままで原稿書くなんていうときは、やはり何を優先したいかっていうと、長時間座っていても疲れない、例えばボトムである事だったりとか、自分のモチベーションを下げない、コンフォタブルな素材であったりとなってくると思うんですよね。会社の雰囲気にもよってくるかなとは思いますけれども、だからといって「じゃあニットにします、ハイゲージのクルーネックがよろしいんじゃないんでしょうか」とか、「ローゲージのタートルネックはいくら温かくて、首周りをカバーしてくれて、ずっと原稿とかデスクワークに集中できるとしてもやめましょう」とか、その辺はやはり必要なんじゃないかなと思いますけど。
RULE「コンフォタブルでも、ドレッシーな素材を選ぶ」
山本:そうなんですよ。まさに今、大草さんが大事なキーワードをいくつか言いました。一つには、コンフォタブルであると。というのは、働き方改革の中では重要な着こなしの変化のファクターになってきていると思うんですけど。自分自身が快適である、で、それが一緒にデスクを囲んでいる人も快適であって欲しいじゃないですか。そういったときにその次に出てくるのが、着ているお洋服のアイテムの種類も大事なんですけれども、素材感ですよね。そこがニットで、ハイゲージの方がドレッシーに見える、ローゲージの方が少しカジュアルに見えるという事が、なかなか皆さんにご理解いただけない、難しいと。自分の着心地を考えながら、またそれがどういうふうに見えるのかも考えながら素材を選ぶのが大事ですよね。
大草:大事ですね。
RULE「デスクワークでジャケットを脱ぐなら、3ピーススーツがいい」
山本:お洋服のアイテムとして、使い勝手の良いアイテムってなんですかね?デスクワークが多い日に。私よくこれからのシーズンで申し上げるのは、ウォームビズのときの着こなしを尋ねられるときに、スリーピースのスーツをおすすめする事があるんですね。これはもちろんタイドアップする場合も、しない場合もあるんですけども、スリーピースのスーツってすごくキザなふうに見える場合もあるんですけども。実は洋服の歴史をさかのぼると、どんどんどんどん洋服のルールっていうのは新しく進化していけいきますので、歴史が全てではありませんが、シャツ、スーツの下に着ているシャツっていうのは下着だったわけですよね。それを見せないほうがドレッシーであると。よくパブリックなスペースでジャケットを脱がないほうがいいっていうのは、そういう事なんですよね、下着一枚にならないように。で、あるならば、デスクワークの自分で仕事をしているときにジャケットを脱ぎたいですよね。で、脱いだときにそのスリーピースの中のベストがあるだけで、シャツが見えるウェイトが減りますから、少しドレッシーに見えるっていう事で、スリーピースのスーツはそういう使い勝手が良いですよっていうふうな話をするんですけども。例えば女性ですと、気温・温度の変化、お部屋の暑い寒いとかあるじゃないですか。ああいうときってどういうアイテムを使えばいいですかね?
大草:私がおすすめしたいのは、冬であればやはりウールがいいと思います。メリノウール100%とか、基本的には天然素材100%で呼吸をしてくれる素材がいいと思うんですね。絨毛なので汚れが付きづらいっていう事、あと吸湿性・発汗性・速乾性が高いので、扱いもすごくしやすいんですよね。で、ハイゲージで毛足の長くないものであれば毛玉の心配も無いですし、あとは細くて少し光沢のある糸何かを使うとニットだけでも、かなりきちんとした雰囲気にはなるので、私はほとんどニットですね。
山本:そうなんですよね。今天然素材の話になったじゃないですか。コンフォタブルであるとかっていう話になると、当然日本の繊維メーカーはすごく進化をしているので、高機能素材、化学繊維の話になるわけなんです。どれが夏向きなのか、冬向きなのかという話になるんですけども、実は今大草さんがおっしゃったように、天然素材には素材が生きているので、毛足が開いて空気を通したり、閉じて吸湿・速乾というような機能をもともと持っているんですよね。それが伝わってないですよね。
RULE「地球に還っていくサスティナブルな天然素材を選ぶ」
大草:そうですね。あとはやはり、きちんと手入れをすれば長持ちをするっていう事もあるので、基本的には当然サスティブルであるっていう、地球に還っていくので、もちろんそういった部分もあると思いますし。あと女性って素材から伝わるメッセージって、ものすごく大きいんですね。ゴワゴワすると心もゴワつくし、ガリガリしていると心もガリガリするし、すごくそこって大きいんです。あんまりそこって無視しちゃいけないと思っているので、必ずアンダーにシルクを忍ばせてくださいっていうふうにはお伝えします。それは気持ちももちろんそうだし、あとは肌着としての効果、消臭効果だったりとか呼吸をしてくれたり、もちろんそういう事もあるんですけれども。あとは、表に着たニットのシルエットをものすごく柔らかくしてくれるんですね。やはり下にコットンを着るとパリッとするんですよ。なので、デスクワークのときはシルクがいいんじゃないかなと思いますね。
山本:そういう素材の機能っていうのは、どんどんお店に行ったときにブランドの方とか百貨店の方とかに聞いたほうがいいですよね?
大草:聞いたほうがいいと思います。
山本:教えていただけますもんね。そういう事で商品を選ぶと、その商品に思いいれも持てますし、先ほどサスティナブルっていう話がありましたけど、これファッション業界にとっても、働く皆さんにとっても大事なキーワードになってくると思いますけども、自分が気に入ったものを買って、長く着ていくっていうのはいちばんサスティナブルですよね。
大草:そうです、そうだと思います。いずれはきちんと地球に戻っていくっていう事で、基本的には選ぶようにはしていますね、私も。
RULE「ウォームビズ、女性はクルーネックニットを活用する」
山本:男性の場合にはベストが非常に使い勝手が良いアイテムなんですけど、ニットでも例えばカーディガンがいいのか、クルーネックがいいのか、タートルネックがいいのか、もちろん全部使いまわしができればいいんですけど、どれがいいんでしょうね?
大草:おすすめはクルーネックですね。
レディス/ハイゲージのクルーネックニット
(23区/オンワード樫山)
メンズ/ハイゲージのカーディガン
(MACKINTOSH PHILOSOPHY/三陽商会)
大草:クルーネックが一枚あると、一枚着て、あとはパールをどういうふうに見せるかっていうのでも、結構夜と昼の両方いけるんですよね。なので、もちろんツインニットもとても活躍してくれると思うんですけど、カーディガンの縦に並んだボタンが、少しほっこり感を出してしまう事があるので。ハイゲージだったら、クルーネックが使いやすいかなと思います。一枚で着てパールのネックレスを表に出す場合は、すごく華やかになります。なので、昼間は半分ぐらい隠せばいいと思うんですね。首の横にパールが少し沿うような感じでネックレスの先は隠れているっていう。外に出ていると、アクセサリーとか光がトゥービジーな感じがするので、やり過ぎな感じになるんですよね。なので少し隠して、半分隠して、夜になったら出す。約束があるときだったり、会食があるときなんかは全て出してもいいと思いますし、あとは中に薄手のブラウス、ボウタイのブラウスなんかはタイを外の中に垂らすだけでかなりドレスアップにも応用できるようなコーディネートになりますので、そういった形もしやすいですし。あとシャツの襟を出すのか隠すのかですけど、襟で顔周りの表情を変えたりもできるので、クルーネックがいいんじゃないですかね。クルーネックも着るだけじゃなくて、必ずストールのように使ってもらいたいなと思うんですよね。例えばちょっとオフィスが暑くなってきたら下に着ていたシャツ一枚になって、例えばこの辺は冷房があたるからクルーネックをストールのように肩にかけるとか、基本的には変幻自在なアイテムなので、あまり着るだけとか思わずに、一枚忍ばせておけば、カーディガンじゃなくて、ストール代わりにもなるのでいろいろ使っていただきやすいと思います。
RULE「男性には、ハイゲージのネイビー色カーディガンがおすすめ」
山本:今テレビだったらテロップ出ましたね。変幻自在のアイテムって。確かにね。男性の場合はクルーネックを着ると、シャツをそれほど見せられないので、逆にドレス感が落ちるんですよね。カーディガンを着る事が多いんですけど、確かに男性もほっこりしてしまう場合があって、素材感ですよね。ハイゲージを選んで、しかもお色目も例えばネイビーとか寒色の濃い色を選ばれたほうがいいという話をするんですけども、デスクワークのときにはそういう気をつかう必要がありますよね。
大草:そうですね。とはいっても自宅のやはりダイニングではないので、ある程度のマナーは必要ですよね。