Q.「仕事でプレゼンテーションがある日のドレスコードは?」
山本晃弘(以下、山本):今日はドレスアップメンの特別編ということで大草さんに来ていただきました。ありがとうございます。
大草直子(以下、大草):ありがとうございます。
山本:昨今ですね、働き方改革というふうなことがすごく言われますが、私が考えるに働き方改革っていうのは、装い方改革でもあるのではないかなと。男性にとっても女性にとっても、どういうふうにスーツを着るのか、ジャケットを着るのか、あるいは着ないのか、そういったことが仕事にすごく大切なことではないかなと思うんですね。それで私のほうは、男性の着こなしについて、お話をしていきたいと思いますので、ぜひ女性の意見を大草さんからお聞きしたいと思います。
山本:まず最初にお伺いしたいのは、私が考えるのは例えばクールビズ、ウォームビズ、あるいはスニーカー通勤というふうな、提言がいろいろなところでなされますけど、単純にネクタイを外せばいい、スニーカーを履けばいいっていうことではなくて、こうシチュエーション、シチュエーションによって正しい着こなしとか効果的な着こなしとか、自分の気持ちが上がる着こなしとか、そういったものがあると思うんです。
当然働いている、管理職になっている女性もいっぱいいらっしゃいますけれども、そういった女性にとってのスーツを着ること、ジャケットを着ることの意味っていうのはどういうものだと思いますか?
RULE「仕事服で大切なのは、相手に寄り添うこと」
大草:装う、仕事の時のスタイリングをする、仕事のときのおしゃれを考えるっていうのは軸が二つあると思っているんですね。
自分軸と他者軸があって、その両方を兼ね備えなきゃいけないのが仕事服であって、仕事の時って、その割合がその場面場面で変わってくるっていうのが、さっき山本さんがおっしゃったことかなと思うんですね。例えば一日デスクワークっていう時であれば、もしかしたらニットもいいかもしれないけれども、プレゼンテーションだったりとか、あとは重要なミーティングなんていうときは、いちばん大事にしなきゃいけないのはプレゼンする相手の目だったりとか、ミーティングするときも、隣に座る上司もしくは社内のトップの人たちの目だと思うんですね。なので休日が例えば9割が自分軸、1割が他者軸だとすると、それが逆転していくんだと思うんですね。なのでジャケットがどういう意味かっていうふうにおっしゃられたんですけども、何もそのときに絶対にジャケットって事は私はないと思うんです。ただ、いちばん大事にしなければいけない、他者軸の方たちが何を着ているのか。
山本:相手のドレスコードに寄り添っているっていうことですよね。
大草:なのだと思います。ダークスーツの男性がメインなのであれば、もしかしたら白いシャツにセットアップ、白いシャツにジャケット、パンツかスカートってこともあるかもしれないですし、もう少しカジュアルな装いの方であれば、スーツは着ずにジャケットも着ずに、ワンピースでもいいかもしれない。そういうなんて言うんですかね、気遣いから仕事が始まっているような気がするんですけども。
山本:そこに参加される方のメンバーのドレスコードとか、空気感がどういうものかを想像して、それに寄り添えるような装いをしていくっていうことですよね?
大草:そうですね。なので自分らしさとか、個性とか、心地よさは、ちょっと控えておいていいかなと思います。
RULE「着こなしへの気配りは、仕事に役立つ」
山本:例えばアエラスタイルマガジンの、私がやっている、雑誌、ウェブの調査でも一般のビジネスマンの方も、それはすごく気づいていて、着こなしが仕事に役に立つと思うか思わないかっていう質問をすると、最近のデータだと96%ぐらいの方が思うっていっているんですよ。着こなしが仕事の役に立つ、自分のプレゼンテーションがしっかり伝わるとか、そういったことを意識していらっしゃるんだなと思うと、すごく心強いなと思うんですよね。
エグゼクティブって言葉あるじゃないですか。昔はヤンエグなんて違う意味で、ちょっとナンパな意味で使っていましたけど、本来のエグゼクティブの意味ってエグゼキュートする人、到達する人とか成し遂げる人って意味じゃないですか。ですから、自分のプレゼンテーションが相手に伝わって、初めてその仕事って成立するわけじゃないですか。いくら良いプレゼンテーションでも、いくら良いミーティングの意見でも、それが伝わらなければ意味がないわけで、伝えるための装いがあってしかるべきですし、その時に相手がどういう、自分自身が装いをしていたら、どういうふうに「この人は信頼をおける発言をしているな」って思ってもらえるかとか、「この人は非常に包容力のある発言をするな」って思ってもらえるかとか、そういうことを意識しながらスーツ、ジャケットを選んだりするのがいいんじゃないですかっていうお話をすると、皆さん驚かれますよね。
RULE「女性は、仕事着にドレスシャツを活用するといい」
大草:やっぱり男性と女性はもしかしたら少し違うかもしれなくって、ちょっと脱線するかもしれないですけど、私ジャケットがマストっていうお仕事以外はもう少し例えばドレスブラウスみたいなものだったりとか、ドレスシャツだったりワンピースっていうものを使ってもいいんじゃないかなっていうふうに思うんですけど。こうやって並ばせていただく時におそらく山本さん、ネイビーのスーツだろうなと思ったんです。その時に、まずニットではもちろんカジュアルすぎるし、ワンピースだともしかしたら座ったときにいろいろ気になるかもしれないなとか。グレーだとおっしゃる通り、ちょっと柔らかすぎるかなっていうふうになったときに。
山本:まさに今日バランスを考えて、自分の発言の意味、役割を持たせるために今日このブラウスをお選びになったと。
大草:そうですね。おそらく男性はスーツだなというふうに思ったので、きちんと感はありながら、ちゃんとスーツの横にいて、決してなんて言うんでしょう、失礼に当たらない服ということでこういうドレスっぽいブラウスを今日は選んできたんですけれども。
山本:女性の方がそういった意味ではアイテムのバリエーションが広いので、すごく難しいなと思うんですけど。今良い提言が出ましたので、そこのところもう少しお聞きしたいんですけれども、ドレスブラウスっていう今おっしゃったディテールというか条件っていうのは、どういうものをドレスブラウスだと大草さんは考えていらっしゃるんですか?
RULE「柔らかい素材のドレスシャツが、女性をエレガントに見せる」
大草:柔らかいまず素材であること。柔らかい素材っていうのは女の人を優しく、やはりエレガントに見せてくれるんですね。当然同時に清潔感みたいなものも出してくれるので、柔らかい素材であること。あとは華美でないディテールがどこかにワンポイントあること。例えば今日は袖なんですね、もしくは襟にもしかしたらあってもいいかもしれない。両方あるとトゥーマッチなんです。なので一部分でいいかなと。色はやはり男性のスーツの中のシャツに準じた色であるってこと。
レディス/デザインにポイントのあるドレスブラウス
ウールのパンツ
(ポール・スチュアート/三陽商会)
山本:そうすると白とかブルーとか、そういった色が多くなってくるんですね。
大草:はい。であるといいかなというふうに思いますね。そうすると、パンツを例えばこういうフラノっぽいっていうかウールっぽいパンツを選んでも、素材の緩急を出せるので、あまり全身がマットな、地味で味のない人みたいな感じにはならないんですね。で、トゥーマッチなアクセサリー遣いとかもせずに済むので、気負いないんですけど、きちんと自信を持って仕事ができるっていうふうにならないかなとは思っていますけれども。
RULE「男性のVゾーン、使う色柄は二つまでに限る」
山本:さっき胸元のブラウスのディテールのお話になりましたけど、男性でいうとやはり胸元のVゾーンってすごく大事な着こなしのポイントになるんですよね。今日はこうやってお目にかかっていますけれども、テーブルの上でここから上しか見えないシチュエーションっていうのも結構あるわけですよね。そうしたときに、この方はどういうタイプの方なんだろうかっていうことが、ここから上だけで、わかることがあって、私がよく申し上げるのは、やり過ぎをしないでくださいと。がんばりすぎて、色とか柄をすごく使ってしまって、もうやりすぎ君になっている場合があるんですね。そういうときに必ずこれも毎回申し上げることなんですけど、色・柄を使うのは二つまでっていう話をして、今日も柄、柄、無地じゃないですか。
メンズ/ネイビーのスーツ
TVフォールドで入れたポケットチーフ
(D’URBAN/レナウン)
山本:やり過ぎをすることによって「この人は別のタイプの人なんだな」っていうことを思われないように、できるだけアンダーステートメントに控えめにということを心がけるようにしますよね。そのブラウスの、胸元のディテールとか袖元のディテールもそういった意味では、ちょっと控えめのほうがいいですよね。それともちょっとやり過ぎの方がいいんですかね。どうなんですかね女性は?
RULE「女性のドレスシャツ、デザインのポイントは一か所だけ」
大草:男性の二つまでとかのルールと同じで、二か所にあるとかなりイメージが変わってくると思います。もしかしたらものすごくモードに転んだりとか、とても個性的になりすぎていたりとかするので、やはりお仕事の相手ってかなり目上の男性もいたりとか、同じ年の女性の方もいたり、もしくは年下の男性女性もいたりするじゃないですか。だからどんな世代、どんなバックグラウンドの方でも、「すごい!やはりファッション業界の方ですね」って言われないように心がけています。
山本:袖元にはすごくデザインがありますけど、胸元はすごくすっきりしていて。
大草:あと襟も。今回はスタンドカラーのような形にしています。
山本:これはあれですね、働く女性の方も非常に勉強になりますね。