Q.「デスクワークの日のドレスコードは?」
山本晃弘(以下、山本):あと先ほどおっしゃったキーワードの中で、自分の気持ちを上げるとか、今日は原稿書くぞとか、企画書作るぞとか、資料整理するぞとか、そういうふうな自分の気持ちを上げていくっていう意味も装いにはありますよね?
RULE「デスクワークの日には、気持ちが上がる素材の服を選ぶ」
大草直子(以下、大草):そうですね、環境にもよるかもしれないんですけど、自分が好きな色を着られる環境であればそれでもいいと思いますし、当然やっぱり指先だったり手先が目立ってくるので、好きなリングをつけるっていうのも状況によってはもしかしたらあるかもしれませんし。あと私がすごくよくやるのは、圧倒的にやっぱり素材なんですよね。服と自分の間に入る素材が、自分が大好きな素材だと気持ちが上がるんですね。なので服と自分の間に必ず好きな空気感を入れていくっていう事は、気持ちとかハートにダイレクトに関わってくると思います。
山本:そうなんですね。なるほど素材感っていうのは、やっぱりすごく大事なんですね。なかなか皆さんには難しいところですよね、洋服のスペシャリストでない方にとっては。触ってみたり、着てみたりする事は大事なんですよね。
大草:そうです、そうです。当然自分の気持ちを上げたり自分の気持ちをリセットしたりするときにも大事なんですけど、「素材=その人の印象」だと思っていいと思うんですね。なのでデスクワーク以外のときでも、シルクだったら例えばエレガントで、穏やかで、マチュアな女性に見えるとか、コットンだと凛としていて、とてもシャープな印象に見えるとか、仕事の場面ではあんまり着ないかもしれないですけど、リネンであればちょっとリラックス感があって自立している女性に見えるとか、そういう素材が持つその人のキャラクターを伝える要素っていうんですかね。
山本:今の話は男性にも通じますね。女性だけではなくて、素材の持つキャラクターとか意味合いっていうのを考えて、装いで選ぶべきだっていうお話ですよね。
大草:そうですね。色とかデザインとかに行きがちなんですけども、実は素材=その人のキャラクターっていうところは凄く強いと思います。
RULE「お店に足を運んで、自分の好きな素材を探してみる」
山本:その肌触りが自分にとって心地良いのかどうかっていうのは、触ってみないとわからないですから、もちろんEコマースもいいんですけど、ぜひお店に足を運んで欲しいですよね。
大草:そうですね。それでもっと素材に貪欲になってもらいたいし、やはり自分の好きな素材は何なのか、色はきっとご存知ですよね、みんな。で、形もきっとご存じだけれども「好きな素材って何なの?」って聞かれるとちょっと悩んじゃうっていう事が多いと思うんですよね。なので、素材の好き嫌いだったりとか、気持ちが上がる、下がるみたいな事はぜひチェックしていただきたいですね。
山本:これ女性の方に常にお伺いしたかった事がひとつあって、香水はビジネスシーンにおいてありかなしか?これ、いろいろな意見があるんですよ。大草さんはどうですか?
RULE「デスクワークの日、香水を使うなら、つけ方に注意」
大草:私自身はつけないと出られないので、仕事の場面でも必ずとは思っているんですけど。たぶん付け方もあると思うんですね。おすすめしたいのは髪の毛をおろしている女性が多いと思うんですけど、この首の後ろに付けていただくと髪の毛で結構カバーされて、あんまりのぼってこないんですね。首の後ろっていうのはあんまりつけないんですけど、私は髪の毛と首の後ろにつける事が多いですね。例えば、こういう手首の内側なんかってよく言われますけど、こういうところに付けていると、ちょっと隣同士のミーティングで座った方が、すごく香りが立ってくると思うんですね。なので、意外と首の後ろ、あと髪の中とか、そういうものにつけるのがビジネスシーンではおすすめですね。
山本:なるほど。香水もあれですね、つけるのが正しいのか、正しくないのかっていう問いかけ自体が間違っていたというか、付け方とか使い方がシチュエーションによって変わってくるっていう事ですよね。
大草:と思います。
山本:あと靴なんですけど、デスクワークの多い日っていうのは、昨今いうところのスニーカー通勤、スニーカーでもいいですかね?どうでしょう?
大草:丸の内でもけっこう推進運動みたいなのが始まっていますよね。どうなんですかね。なかなかコーディネートがついていかないっていうのは、ちょっと実感としてありますけどね。
RULE「スニーカーを履くなら、スーツの素材や形も変える必要がある」
山本:なるほど。今日このスーツのままでスニーカーを履いていたとしたら、それはおかしな着こなしなんですよね。スニーカーを履きたいのであれば、着るそのスーツの素材感や形、サイズ感を変えていかないといけないんですよね。その辺を我々も丁寧にお話をしていかないといけないですよね。
大草:そうですね。本当にスニーカーを履いていて、歩きやすさ以外に自分にメリットがあるのかとか、そういう事も考えるべきかなと思いますね。
山本:確かに。歩きやすさとか快適さだけではないですからね、仕事のときに必要な事って。
大草:どうしても仕事のときに靴を隠してしまうような、居心地の悪さがもしあるのであれば、もしかしたらやめたほうがいいかもしれないし、やはりパーフェクトなコーディネートが思い浮かばないから、それもストレスってなるんだったら、やめたほうがいいかもしれないし、逆算していった方がいいかもしれないですね。
山本:そうですよね、確かに。履く事がかえって仕事にとって支障になる事がありますよね。単純に、男性の場合スーツで今まで従来通りのドレッシーなスーツではなくて、セットアップ、スーツそのものがセットアップなんですけども、素材のもう少し柔らかい、あるいは伸縮性があったり、そういった素材でサイズ感もこれほどフィット感の高くないセットアップスーツが、いろんなブランド、お店で取り扱いがありますけども、スニーカーを合わせるときにはそういったものをお選びになったほうがいいのかな、男性にも女性にもと思いましたね。あとは正解かどうかっていうのが、女性の場合には通勤のときとオフィスのシチュエーションで、靴を履き替えられたりしているじゃないですか。大草さんも、される事あります?
大草:あんまり靴を持ち歩いて、変える事はそんなにはないですね。例えば私の場合だと早朝ロケがあって、夜レセプションまで行かないといけない、それで取材も撮影も全部入っているみたいなときは、もう決まった靴があるので、それで行くようにしていますね。
RULE「女性には、エナメル素材の黒いバレエシューズが万能」
山本:全部に?どういう靴ですか?
大草:エナメルの黒のポインテッドトゥのバレエシューズなんです。
山本:それは、どのシチュエーションにも行ける?
大草:行けます。
山本:歩きやすくもあり、ドレッシーにも見え。
大草:昼の時間、朝の時間から夜の時間までの時間軸も全部満たしてくれて、なんなら間に子供の学校みたいなのが入ってくるんですけど、それにも対応してくれるっていうのはそんなにはないんですよね。
RULE「男性には、ドレス顔でスニーカーのようなソールの靴がいい」
山本:そういった意味では、ドレス顔をして履き心地がスニーカーのようなシューズって最近かなり出ているんですよ。
メンズ/ドレス顔でスニーカーソールの靴
(三陽山長/三陽商会)
メンズ/ドレス顔でスニーカーソールの靴
(三陽山長/三陽商会)
山本:ぱっと見たところ通常のプレーントゥに見える、あるいはウィングチップに見えると。なんだけども、自分だけが履き心地で感じているソールがスニーカーに近しいものになっていて、歩き心地が良いと、快適であると。そういうようなシューズが、かなりいろいろなブランドから提案がされていますよね。そういったものをおすすめする事が、男性の場合には多いですね。
大草:女性は、なかなかちょっと難しい部分もあるとは思います。やはり背もそんなに高くなくて華奢な体型が多いので。体型もあるんですよね。けっこう海外のスナップなどを見ていると当然スーツにスニーカーで、本当にかっこいい人とかもいるんですけど、やっぱりそこがなかなか難しくて。必ずくるぶしを出してくださいとか、色は基本的にはベーシックカラーになじむ色にしてくださいとかっていうふうにはしているんですけど、なかなか難しい事は難しいと思いますね。
山本:体型になかなか似合わないと。
大草:けっこう仕事服という意味では厳しいと思いますね。例えば長いスカートを履けるとかそういうシチュエーションだったら別なんですけど、ある程度きちんとした格好しているところにスニーカーっていう事になると、それだったら例えば通勤のときだけに限定されるとか、そういった使い方のほうがいいかなと個人的には思います。
山本:確かにスニーカー通勤、ファン+ウォークというような言われ方をして、働き方が快適である、働き方が健康であって欲しいとかっていう提言の趣旨は我々も理解できるし、それは全くアグリーなんですけれども。一方でそれが仕事にとって役に立つのか、立たないのか、自分の着こなしを素敵に見せられるのか見せられないのかっていう次の提言もしないといけない。だから快適であって、でも素敵に見えるっていう着こなしをサイズ感だったり、形だったり、色だったりっていう事で考えていかなければいけませんし、あるいは、現実的には通勤のときだけ非常に健康的なスニーカーにしたり、デスクワークのときには、プレゼンテーションのときには「置きジャケ」っていうふうな言葉がありますけど、置き靴を置いておいて、それを使われるっていう事も現実的な対処法ですよね。
大草:そうですね。まさか、それで会議に出たりは難しいと思いますけれどもね。もちろん職種にもよるんでしょうけども。
山本:そうですよね。そういった意味では働き方も変わっているけれども、変わってはいけない部分もある。それをどういうふうに工夫して、着こなしを考えていくのかっていうのを我々がこれからもやっていかなきゃいけない事ですよね。いろいろまたお聞きしたいと思います。ありがとうございます。
大草:ありがとうございます。