Q.「出張の日のドレスコードは?」
山本晃弘(以下、山本):働き方改革は着こなし方改革であるという事で今日ずっとお話をしているんですけれども、当然オフィスワーカーの方、男性も、女性も出張があるじゃないですか。で、出張の装いが普段通りのスーツでいいのか、コートでいいのか、バッグでいいのかっていう質問をよくされるんですよね。しかも、そんなに大荷物を抱えていくわけにはいかないので、できれば一着で済ませたい。一泊二日であってもできるだけ少ないワードローブで過ごしたいというのがビジネスマンの要望であると思うんですけども、女性の方が出張に行く場合に、アイテム選びであるとかね、気をつけないといけない、こういったアイテムがおすすめだというものがありましたら教えてください。
RULE「女性はトップスで変化を、男性はボトムスで変化をつける」
大草直子(以下、大草):そうですね。人の印象を変えるのってトップスじゃないですか。基本的にパンツはやはり着こなしを支える土台なので、人は土台をそんなに見ないんですよね。パンツはなんていうんですか、もしかしたら天候にももちろんよりますけど、通しで一本でも良いのかなと思います。いちばんおそらく汎用性が高いというか、いろいろとアレンジできるのは、スーツを一セット着ていくのか持っていくのかして、インナーを当日とその次の日と変えるようなかたちにすると、だいぶ印象を変えられると思うんですけども。
山本:なるほど。それ男性と逆なんですね。
大草:そうなんですか。
山本:私の流儀かもしれないですけど、男性のビジネスマンにおすすめする場合には、ボトムスを出張先で変えられたらいいですよと。それはなぜかっていうと、ジャケットはネイビーのジャケットを一着持っていけば、ボトムスがグレーのパンツにすれば、ビジネスシーンで使える。で、そのままじゃあ夜にお食事に出かけようとか、あるいは仮に次の日にゴルフに行こうっていうふうな話になったときにはデニムにするのかチノにするのかすれば、ジャケット一枚あれば何とかなりますよっていう言い方をする場合が多いので。今のお話を聞いて、すごく面白いなと思いました。
大草:そうですね。女性は、ボトムスを変えると靴を変えなきゃいけなくなってしまうので。ボトムスは一種類にして靴も一種類なのが、そっちの方が荷物が少なくて済むと思いますね。
RULE「速乾、撥水、防シワ。高機能素材が出張時に便利」
山本:ジャケットにしてもボトムスにしても、最近ですと高機能素材、例えば速乾性、撥水性、あとはシワにならない、いろんな機能が搭載されているじゃないですか。これ出張のときには役立ちますよね、天候がどうなるか分からないですし。一方で私いつも疑問に思うのが、パッカブルのアイテムもけっこうあるじゃないですか。ジャケットとかコートで、荷物に入るようにひとつの袋の中に入るような機能がありますよと提案をされているブランドとかもあるんですけど、あれは皆さんパッカブルにしてるんですかね?
大草:どうなんですかね。出張のときは、そんなに必要ないのかなと思いますけれども。
メンズ/高機能素材のセットアップスーツ
(KASHIYAMA the Smart Tailor/オンワードパーソナルスタイル)
レディース/高機能素材のセットアップスーツ
(Aquascutum/レナウン)
大草:例えばシワがよらない、シワがつきにくい素材である事とか、速乾性が高いものであれば、そんなに気を使わなくてもいいのかなと思いますね。で、そんなにかさばるものでもないじゃないですか。なので、小さく畳んで荷物のバックの上に置いたり、手にかけたりするくらいで充分かなと思いますけどね。パッカブルになると、薄手のナイロンだったりとか、かなり素材としてパッカブルにすべく選ばれた素材なので、あまりいろんなシーンへの汎用性は低くなると思うんですよね。例えば移動のときはそれでもいいかもしれませんけれども、夜に急に取引先と会食が入ったなんていうときはやっぱり難しいでしょうし、女性はもしかしたらあんまり使わないかもしれないですね。
山本:そうですか。男性にはパッカブルのアイテム非常に多くて、ナイロン製のコートとかだと、実はこれ雨が降るか降らないかわからない、あるいは寒いか寒くないかわからない、そういったときには非常に使い勝手が良くて。夜にスーツを着ないでそのナイロン製のコートだけ着て食事に出るとか、そういうときにパッカブルのナイロンコートを使う事は男性の場合はあります。バッグはどうですか?出張のときのバッグは。
RULE「出張バッグは、キャスター付きのキャリーケース」
大草:特に女性は難しいですね。例えば肩からかけるバッグなんかは、肩のラインがすごく崩れてしまったりするんですよね。だけれども下げて歩くと、やっぱりとても重い。女性は、けっこう難しいですね。引き手のついた本当に一泊用のキャリーケースみたいなものがいちばんストレスがないんじゃないかなと思いますけれどもね。
山本:肩にかけてシルエットが崩れるっていう事でいうと、出張のときに限らないんですけど、最近増えてきたリュック。これがビジネスウェアでありかなしか、さて大草さんのアンサーはどうでしょう?
RULE「2ウェイや3ウェイの持ち方ができるリュックは、ビジネスでもOK」
大草:私自身は持ちませんけれども、ただ時代が変わっていく。良い意味で変わっていく中のひとつには入ってもいいんじゃないかなと思います。例えば、アウトドアブランドのバックパックはダメですよ。ダメですけれども、あるじゃないですか、例えばこうも下げられるし、移動のときはリュックにもできるっていうタイプはありますよね。あれはね、よしにしてもいいと思いますよ。
山本:後から、後出しで申し訳ないんですけど、賛成です。私もあるときまでは、リュック禁止と申し上げてきたんですよ。そうしたらですね、あるときに恵比寿に動く歩道あるじゃないですか、あそこで自宅から駅に向かって歩いていたら、向かってくる方がリュックばっかりだった日があったんです。その日ね、あまりにも多いからリュックを背負っている方の数をカウントしたんです。で、その次の日に動く歩道を乗ったところから、駅の改札のところまで何分何秒なのかというのをタイムカウントしたんですよ。それで前の日の人数を割ったら6秒に一人の割合でリュックサックだったんですよ。こんなに増えたんだと思って、これは私がリュックを禁止だって言っているのは時代遅れだと。どんどんルールは進化していくべきだと思って、ありかなしかではなくて、何がありかっていうものを提言しようと考えて、それに大草さんもおっしゃったようにリュックでもいいけれども、ツーウェイ、スリーウェイの持ち方ができて、クライアント様の前に行くときにはブリーフケースでこう持っていける形がいいですよと。
大草:それは私もありだと思いますね。
山本:リュックサックは、今日からありにしていくので。世の中ではもう展示会なんかを拝見すると、バッグメーカーがもう「リュックばっかり売れます」という事で、ビジネスマンの方はもうずいぶんフォワードに行っているので。いちばん実は遅れているのはファッション業界なのかなというふうにも思います。
大草:そうかもしれないですね。
RULE「女性におすすめするのは、パールの長めネックレス」
山本:出張のときに、使いやすい小物とかアクセサリーってありますか?
大草:一連のものだとかなりベーシックな、クラシカルな印象になるので、少し長めのもの、例えば80センチぐらいのパールのネックレスとかは、とても使い勝手がいいですね。例えば長く垂らしておくと遠目から見たときもきちんと目立ってくれる、遠目にも華やかな印象になる。パーティーにも通用するネックレスにもなりますし、二連にして一連目を少し隠しておくと、例えば35センチと何センチっていうふうに、表に出ている部分を調節できたりするので。あと、ぐるぐる巻くとブレスレットになったりとか。使い勝手がいいんですね。なので、ネックレスは少し長めのものを持つと、いろいろアレンジできるかなと思います。
RULE「男性は、ネイビーの無地ネクタイをバッグに忍ばせるべし」
山本:男性の場合にはですね、出張先、カジュアルなシチュエーションが多いのでタイドアップしていかないと言われる方もいるんですけど。オフィスに置きジャケがあるように、よくいうのが「忍ばせタイ」。ネクタイをバッグに一本忍ばせておくと、仮にですよ、現場のミーティングだけだったのが「今日社長も紹介します」みたいな事になったときに、さっとつけられるようなタイを一本バックに持っておくといい。そういうときに、私が使い勝手がいいなと思うのはネイビーのソリッドタイ。柄が多すぎるとトゥーマッチな方になるんですけれども、仮にストライプのスーツ、ストライプのシャツを着ていたとしても、ネイビーのソリッドの無地のタイをすればそこで引き算になるので、少し上品に見えますから、ネイビーのタイを「忍ばせタイ」にしてくださいっていう言い方をするんですね。大草さんが上手にキャッチワードをつけられるので、私も頑張って今キャッチワードを申し上げてみましたけど。
大草:面白いですね。タイはおそらく女性にとってのネックレスの代わりなので、Vゾーンをどういうふうに印象づけていくかっていう事だと思うので、面白いですね。忍ばせタイ。
山本:使ってください。
大草:忍ばせたい、忍ばせタイ、どっちですか?
山本:何回も言わないでください、恥ずかしいですからね。今日は着こなしの話をずっとしてきたんですけども、着る事はビジネスマン、ビジネスパーソンにとっては働く事とほぼ同義であるというふうに私たちは考えています。ぜひ自分にとっても、一緒に働く仲間にとっても、あるいは仕事をする相手にとっても、仕事の効率が上がったり、良い仕事ができたり、そうしたほうが楽しい人生になりますし、仕事になりますから。そういった事を、これからもどんどん提言をしていきたいと思いますし、大草さんからもぜひ提言をしていただければと思います。ありがとうございました。
大草:ありがとうございました。