―――メンズプレシャスのファッションディレクター、山下さんに色々お聞きしたいと思うのですが、まずは、”山ちゃん”と呼ばせてください。山ちゃんのファッションの原点について教えていただけますか。
高校3年生の時に、深夜番組で「コレクターズ」という日本のモッズバンドが歌っているところを見たんです。ピタピタのジャケットにホワイトジーンズ、サイドゴアブーツを合わせたり、そういったスタイルで、僕も高校3年生でイギリス製のスーツを買ってヴェスパを36回払いローンにして乗ってっていう感じで。そこからクロージング、スーツってカッコいいんだなと思い始めましたね。
―――音楽からってことですね。
映画が趣味になっていろいろ見ていく中で、ウディ・アレンの『アニー・ホール』とか『ボギー!俺も男だ』を見て、そこにドップリはまってしまうんですけども。そうすると私もとても飽きっぽいものですから、(今までモッズに影響を受けて)ピタピタのモッズスーツを着ていたのが、クタクタのテロっとしたスーツにチノパンみたいな、そういう方がカッコいいんじゃないかと思って。で、もうすぐに宗派替えしちゃって大学2、3年生の時には全部売っ払っちゃうみたいな。
―――その時代を経て、そこからヨーロッパの方にシフトした時期もあったんですか?
メンズファッションの雑誌の仕事に関わるようになってからですね。フィレンツェに行けば「やっぱりフィレンツェのスーツはいいなぁ」。ロンドンに行けば「やっぱりサヴィルロウは最高だよな」。フランスに行けば「この色使いが一番美しいな」と思ったり。とにかく影響されやすくて。良い意味でも悪い意味でもミーハーなところがあるなと思いますね。
―――楽しんでるなという感じはします。
そうですね、楽しいです。
―――今日着ていらっしゃるスーツはどちらのものですか?
これは去年、フィレンツェのテーラード”LIVERANO & LIVERANO”で仕立ててもらったものです。どちらかっていうと僕がスーツを着る時っていうのはカジュアルに着ることが多くて、そういう時に一番活躍するのがJOHN SMEDLEYのニット ポロシャツですね。靴はSALVATORE FERRAGAMOなんですけども、アンディ・ウォーホルがビスポークして履いていたものをベースにしたモデルで、ペンキを跳ねたような雰囲気なんですよね。フェラガモを履くの始めてなんですけども、なかなか履き心地いいなと思います。
―――山ちゃんが考える“ドレスアップ”についてどうお考えでしょう?
洋服は人間の行動を律してくれるものだという風にも考えてるんですね。たとえば、ダボダボの汚らしいジーパンにスウェットで歩いてたら、コンビニの前で地べたに座っちゃうのも平気になっちゃうし。ただやっぱり、キレイな格好をしていると、こういうことはしない方がいいな、こういう風にありたいなっていう。そういう仕草であったりとか、立ち居振る舞いっていうものを自然に作ってくれるんじゃないかなと思うんですよね。
―――服が自分を律するというのはおおいにありますよね。
洋服を着て気持ちがでっかくなってしまう、横柄な振る舞いになってしまう。それはどんなに高いものを着ていても、本当のお洒落っていうことではないんじゃないかなって思いますね。
<スタイリング>
スーツ / LIVERANO & LIVERANO
シャツ / JOHN SMEDLEY
チーフ / ANDERSON & SHEPPARD
サスペンダー / TIE YOUR TIE
時計 / PATEK PHILIPPE
ハット / JAMES LOCK
シューズ / Salvatore Ferragamo
<SPECIAL THANKS>
大塚将生 Art director & Graphic designer
marron’s inc.