河合―――今日はアルフレックス ジャパンの創業者の保科さんに色々お聞きしたいと思います。
保科―――よろしくお願いします。
河合―――まずは保科さんのファッションの原点や影響を受けられた方のお話をお聞かせ下さい。
ファッションの原点
保科―――私がまだ高校の1、2年頃に非常に厳しいカトリック系の学校だったので、詰め襟でボタンでダブダブのスラックスがユニフォームだったんですが、それが気に入らなくて、友人たちを集めて3~4人で全部スラックスは詰めて、詰め襟の学ランの脇をほどいて、それを詰めてピタピタの学ランとピタピタのスラックス、当時はマンボズボンと呼ばれてました。何かこう、人と同じことをやりたくない。ちょっと違うことをやってみたいということに気付いたのはどうもその辺りが原点のような。
影響を受けた人物
河合―――その後に社会に出られて、影響を受けられた方がいらっしゃると思うんですよね。
保科―――社会に出てからは、何と言っても私の親父のような存在なんですけれど、ヴァンヂャケットを創業された石津謙介氏。この方が私の上司であり、先生でもあり、大げさに言えば人生の師でもありました。石津さんから一番教わったのは、基本をしっかりするということだと思うんです。
河合―――私もアイビーの最後の世代に青春時代を送ったんです。雑誌なんかを通じてですが、それを教えていただいたお陰で、少なくとも人前に出て恥ずかしくない格好が出来るようになったのはそこのお陰ですね。
ファッションの楽しみ方
河合―――次に保科さんにお聞きしたいのはファッションの楽しみ方についてですね。
保科―――これも石津さんが言ったことですが、TPOというタイム・プレイス、それからオケージョン。この3つを私はつねに気にしていて、どういう場面なのか、どういう方と一緒なのか、自分がどういう立場でその席にいるのか、時間の関係もありますし、そのことを非常に気にするようになりましたね。
河合―――それを踏まえて、オシャレ心を見せたい時には、どういうことを具体的に考えられますか?
保科―――ちょっとしたパーティに出かける時なんかも、基本はカジュアルなんですよ。カジュアルという路線が世界的にヨーロッパでもアメリカでもそうなんですが、ファッションの考え方として定着しているんじゃないかと。それは今、私たちがやっているビジネスも同じで、上質なカジュアルというものがどうあるべきか、しかもそれは非常にプレーンであって、飽きがこない。飽きがこないということは耐久性がある。というように、ずっと一繋がりになっているんですね。ファッションでもセーターやシャツを買う時に、これは2年、3年、4年、5年、ちゃんと着られるかどうかと思いながら買うことがあります。ファッションというものを楽しむんだけれども、毎年ころころ変わる流行というものには、あまり付いて行きたくはないというのが基本的な考え方です。
河合―――自分の好きなものが年とともに絞られてくるというのはありますよね。
インテリアとファッションの共通項
保科―――私がこの家具屋をやり始めた原点は、1967年にイタリアに行くんですけれども、イタリア人の一般の方のお住まいに行った時に、あまりにも作りがプレーンで、家具類もほとんどグレー・ベージュ・白の間でトーンが変化するんですが、そのトーンの中大体収まるんですね。ボンジョルノと言って入ってきた人はすごい派手な格好をしているわけですよ。たとえば極端に言えばグリーンのジャケットに赤いネクタイなんていう人もいるわけです。そういう人が家の中に入ってくると、インテリアとファッションが実に良く合うんですよ。ファッションを引き立たせるための、つまり自分たちの生活を引き立たせるためのインテリアという考え方があるんです。
河合―――本当にスーツの考え方ですよね。ベースが上下があって、ネクタイやシャツで少しポイントを付けるという。
保科―――今日はたまたま、こういおう機会なので少し目立たないといけないかなと思いましてこの格好をしてきたんですけれども、普通は紺のブレザーに白いシャツ、グレーのスラックスと相場が決まっているんですよ。それがこのビジネスをやる上で、説明しなくともコンセプトをご理解いただけるというのがありますよね。
ドレスアップについて
河合―――最後に、海外経験の豊富な保科さんの考えられるドレスアップについて少しお話いただけますか?
保科―――一番弱いところなんですよね。まぁでも50年以上イタリアと行き来をしていて、イタリアにおける社交の場でもドレスアップの機会はずっと減ってきているような気がします。むしろカジュアルという社会風土が前に出てきたために、追いやられているというか、それが少し目立たなくなったんではないかという方向に来ているので、お陰様でこのアルフレックスという家具屋はもうじき創立50年になるんですが、当初からカジュアルというものをベースにしていたんです。カジュアルだから安い、カジュアルだから高いということではなくて、インテリアのイメージとしてカジュアルというものをベースにして。だけどそれは、カジュアルなんだけれども上質でなければならないというのを基本に置いています。普段着の生活、だけど、上質な普段着の生活をしようという、私の今のファッション観とインテリア観というのがぴったり一致しているので、あまりファッションやお洒落な話をしてくださいと言われると非常に困るんです。
<スタイリング>
ジャケット:BOGLIOLI(ボリオリ)
パンツ:ORDER MADE
シャツ:FEDELI
靴:TOD’S
時計:WENGER
<撮影協力>
アルフレックス 東京
〒150-0012
東京都渋谷区広尾1-1-40 恵比寿プライムスクェア1F
営業時間:11:00~19:00 定休日:水曜
ホームページ:http://www.arflex.co.jp/