メンズファッション誌は、おもに雑誌、それもファッション誌を得意とする出版社から発行されてきた。その常識を破って出てきたのが朝日新聞出版のアエラスタイルマガジンである。母体はニュース誌のアエラ、そのスピンオフということですね。メインの読者である30代、40代のビジネスマンの公私の「実情」を緻密に把握した上で提案するビジネスウエアやスーツの特集はAmazonの売り上げランキングでも発売後即上位入りするほどTRUSTが高い。以前はぼくの同僚でもあった山本編集長にその「現場主義」のスーツ術を聞いてみた・・・・・・ホスト林 信朗敬白
林:今回は「AERA STYLE MAGAZINE」の山本晃弘編集長にお尋ねをいたします。編集長の山本さんを実は僕よく存じていまして、前に一緒の職場で働いていたこともあるんです。今の「AERA STYLE MAGAZINE」の編集長になるまでの略歴を教えてもらえますか。
山本:私は10代の頃から「MEN’S CLUB」や「POPEYE」を読んで、当時はあと「チェックメイト」とか「Hot Dog PRESS」とかもありました。アイビー、トラッドの服が好きで、大学を卒業して、当時憧れの婦人画報社に入社しまして「MEN’S CLUB」に配属されました。「MEN’S CLUB」では5人の編集長とお仕事したんですが、その5人目、最後の編集長が林さんでいらっしゃったわけですね。その後ですね、「GQ JAPAN」の創刊を2002年に準備をスタートして、2003年に「GQ JAPAN」の編集をスタートしました。そこで 2008年まで「GQ JAPAN」の編集者をやっていまして、その後、朝日新聞出版自体がスタートしたのが2008年なんですね。
林:じゃあ ちょうど10周年ですね。
山本:2008年に来て「AERA STYLE MAGAZINE」の編集長として創刊をして、今ちょうど10年になります。
林:「AERA STYLE MAGAZINE」の場合は雑誌に加えてタブロイド判の媒体を新聞に挟み込むわけですね。
山本:タブロイドを新聞に折り込むことで、例えばボーナス時期にこのスーツいいじゃないかという風に強制的に気付いていただければ、日本の男性諸氏が皆ドレスアップに繋がるのではないかと。
林:もう新聞を開けたらこれが出てくるから、これを開けると今度は色々と春夏秋冬のビジネスマンのファッションアドバイスが出ていると。
山本:これは創刊の時からずっと続けているやり方ですね。
林:例えば山本編集長なら、こういうスタイルをいくつか持っていれば大丈夫というお勧めみたいなものはありますか?
山本:私が最初に創刊した時に申し上げたのは、スーツを着ることって非常に民主的なことで、誰でもがいくつかルールを覚えれば素敵に見えるということです。一つはきちんとサイズの合ったスーツを着ること、これは私がルールを提唱する時の1番目の大切な要諦ですね。
林:1にサイズですね。
山本:そして、その次は色ですよね。私はビジネスマンに問われた時には必ずネイビーを勧めます。ネイビーの次に何を買ったらいいですかと言われることがあるんですが、ネイビーの次にはネイビーを買ってくださいと言います。三着目くらいになってようやくグレーが出てくると。男の色の三原色はネイビー、グレー、そして茶と言われますが、茶はなかなか日本人には合いづらい色だと思います。ネイビーの色のイメージは清廉であること、清潔であること、凛々しいこと。であるならば、私はクリーンな仕事をしますよ、しかもスピーディーに動きますよ、あなたにきちんと相対峙していますよということを伝える道具なんですから、ネイビーのスーツをぜひお召しになるのがいいのではないかと。そう言いながらも、じゃあなぜグレーが三着目に必要かとなるんですが。例えば私は林さんの編集長の下で一緒にお仕事した頃に怒られました。私も今、編集長として部下を怒ることもありますよね。その時にこういうネイビーの濃い色のボスから怒られるとちょっと圧迫感があってですね、押しが強くて怖いんですよね。
林:本当?
山本:ネクタイもソリッドタイとかではなくて、暖色系のプリントのネクタイをしてみるとか、そういったことで自分の仕事を演出していくというか。
林:なるほど。パワハラを避けるためにグレースーツってことがあるんですね。
山本:あるかもしれません。
林:そういう山本編集長、それから「AERA STYLE MAGAZINE」の考え方をこれからはもっと実際のショッピングとかそういうシーンに適用していこうということで、
コンシェルジュサービス?これはどういうことですか?
山本:今、自分で言うのは口幅ったいですけど、服育という言い方をしていますが、洋服の着こなし、着方そのものを改めて基礎からお伝えするという仕事をしているんです。そうした中でWEBに訪れた方が自分の着こなしに迷ったり、あるいは購入するジャケットやスーツに迷った時にチャットボットが立ち上がってですね、相談できたり、そのお洋服がどこに在庫があるのかを聞けたり、コンシェルジュ的にそのお洋服を取り置きしていただいたりという風なことをAERA STYLE MAGAZINEのWEB上でできるようなサービスを考えています。
林:両方あればいいんですよね。実際にお店に行って、素材を触ってみる、素材を確かめる、試着してみるっていう。そういうリアルな体験も必要だしね。それともう一つ、こういう服育的なチャットボットで自分に合った知識を授けてもらう、そういう意見を交換するっていうことも大事だと思うんですね。
林:最後にお聞きしたいのは、これからの「AERA STYLE MAGAZINE」の方向性ですね。これからはどういう方向性で行きますか?
山本:日本のビジネスマンがスーツを着た時に勇気が湧く、自信が湧くっていう骨子は変えないでいきたいと思います。一方で スーツだけではなくてファッション全般、あるいはライフスタイル、名刺の渡し方一つとっても接待の場所の予約の仕方一つとっても、ビジネスマンにとっては数多くのハードルがあると思うんです。そういったビジネスマンのリアルな声に一つ一つ答えていける雑誌、媒体、タブロイド、WEBでありたいなと思います。ビジネスマンの方は非常によく勉強してらっしゃいますし、仕事を成功させようという意欲が高いので、そういった方の声に耳を傾けてですね。リアルな解答を、こちらからの提案ばかりではなくて、わたし達も学んで、もちろんファッション業界の皆さんからも色々教えていただいて、そのマッチングをできるような媒体でありたいなと思います。
林:これからも「AERA STYLE MAGAZINE」の健闘を祈っております。
山本:ありがとうございました。今日はお目にかかれて嬉しかったです。
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<出版>
雑誌とタブロイドで届けるアエラスタイルマガジンは、2008年11月の創刊。
ニッポンの男たちの着こなしが素敵になるように、一貫して応援してきました。
いまビジネスマンの理想は、「スマート=賢くてスタイリッシュ」であること。
ラグジュアリーなだけでは満足できない。
ニュースだけでも満足できない。
そんな声に応えるスタイリッシュな「学びのサロン」です。
AERA STYLE MAGAZINE(アエラスタイルマガジン)
2018年冬号(11月24日発売)