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ひと昔前のメガネに対するイメージはどのようなものであっただろうか。「眼鏡は男を三分上げる」と言われていたり、真面目、勤勉などのイメージがある一方で、それを揶揄されることもあった。しかし、それは昔の話。時代の流れとともにメガネの役割は医療機器としてだけではなく、ファッションアイテムとして認知されるまでに進化を遂げている。その進化はやがて価格にも反映されるようになり、今は数千円で買えるまでに至っている。使い方もポップになり、若者はメガネをファッションの一部として取り入れるようになった。
メガネの世界的な産地、福井県鯖江市はそんな時代の流れにともに寄り添う反面、大量生産に舵を切ることはせず、伝統的なクラフトマンシップを支えて独自のブランディングを形作り、今や国内生産の95%、世界でも20%以上のシェアを誇る世界的なメガネ産地として独自の進化を遂げた。それはメガネだけではなく、街づくりにも好影響をもたらすまでになった。
鯖江のメガネ産地としての歴史がスタートしたのは20世紀初頭。冬は雪深く、農業だけでは経済的に限界があるため大阪からメガネ製造のノウハウを持ってきたのが始まりだ。各々の家で役割が割り当てられ、分業で製造がスタートした。それは現在でも引き継がれ、小さい工場も含めると600という、人口規模7万弱の自治体の中に驚くべき数の工場が鯖江市に存在している。
鯖江のメガネ産業を牽引するボストンクラブは、どういう人が作っているか顔を見て必ず確認しているといい、分業で工場が多数あるとは言え、横のつながりがとても強い。家族経営で何代も続いている工場が大半で、伝統工芸としてのメガネ作りを果たしていきたいという想いが共通しているので、工場一貫生産よりも意思疎通が図れ、お互いが切磋琢磨する。
ボストンクラブのブランド【ジャポニスム】の塗装加工をしている工場では、ジャポニスムだけで今まで1000色以上の色を作ってきたという。はたまた組立工場では、プロトタイプから完成品までのサンプルが自社で管理できないほどの数になるとか。妥協を許さないコミュニケーションが何度も何度も繰り返された結果だ。強固な絆はそうしてできあがり、その集合体にしかできない世界一のクオリティが完成する。
世界一のクオリティを感じるには、百聞は一見にしかず。実際にメガネをかけてみるといい。ジャポニスム独特の流れるようなデザインは然ることながら、装用感も超一流だ。モデルによってはまるでメガネをかけていないように感じるものもある。世界一のクラフトマンシップはここで感じることができる。
ボストンクラブは伝統的な技術を守ると同時に、ある大手企業が開発したウェアラブルコンピューターの開発を手伝うなど、時代の先を行くテクノロジーを受け入れる姿勢も合わせ持つ。その柔軟で新しいことにチャレンジするモノづくりの姿勢とこだわりは他の追随を許さない。多様化が進む中で、子どもたちの世代へ自分たちが何をすべきかを考え、それを一丸となってチームで進めていく、そのリーダーシップをボストンクラブが担っているのだ。これからのボストンクラブの動きにも注目していきたい。