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福島県石川郡古殿町。植林された杉の木が芸術のように整然と並び、その緑の恩恵を預かった林業が盛んな人口4500人ほどの静かな町。街の雰囲気をそのまま映したような穏やかな人々がいるこの街に、エルゴポックが長年、絶大な信頼を置くバッグ工場がある。
近年ファッション業界を取り巻く生産工場の危機は年々深刻になっている。地方の過疎化の煽りを受けた深刻な人手不足や、その人手不足からくる後継者不足などが原因で国内の生産工場は次々と廃業に追い込まれている。
バッグ業界も同様で、生産を海外にシフトせざるを得ない状況になっている。そういった状況の中で、型紙を作り、生産まで一貫して行うスタイルを持った工場は国内では数える程しかない。その数少ないうちのひとつがこの工場だ。
エルゴポックは本物のメイドインジャパンへの思い入れがとても強い。メイドインジャパンへのこだわりは完成に至るまでの工程やバッグ作りの信念などから窺い知ることができる。
まずはバッグに対しての考え方。ただカッコいいだけではなく、道具としても使える。この両方を担保してこそエルゴポックのバッグ、というフィロソフィーだ。
普段使いするバッグはもちろんカッコいいことに越したことはないが、道具としての機能を持ち合わせてなければならない。道具としての機能を持たせるためには通常のバッグに比べて多くのパーツが必要となり、組み立てに細かい作業が必要だ。そこで生産に携わっている人たちにハイレベルな意識が必要となり、その意識を持っている人種は世界を探しても少ないのだが、日本人は持ち合わせている。メイドインジャパンのクオリティは生産者のハイレベルな意識によって担保されているのだ。
次に日本国内での地産地消。海外に出せば安く収まるところを、国内の工場を使うことによってコストは高くついてしまうかもしれないが、国内で回るようにすることで職人の生活を支えることになる。
前述したように、ただでさえ人材不足のこの日本で職人の技術はとても貴重な日本の財産だ。業界を活性化させるためにも、社会貢献的な意味でも、メイドインジャパンに対するエルゴポックの想いは強い。
そしてエルゴポックが信じる日本人の感性だ。ひけらかさない、けれども主張を持った日本人的思考をエルゴポックは大切にしている。それがわかるのが、見えない部分のクオリティだ。特に補強部分のこだわりは他の追随を許さない。金具パーツの接触部分をよく見ると内側のレザーも表と同様になっている。これは見た目だけではなく、補強の観点で通常のものよりも強力になっているのだ。パッと見では他のバッグと何が違うのかわからないが、こういう慎ましいながらもしっかり機能が備わっているディテールは日本人の仕事ならではと言える。
エルゴポックを展開している株式会社キヨモトの社長は「海外の技術力は以前に比べて各段に上がっています。中国や東南アジアの工場でも見た目はメイドインジャパンのものと遜色無いものが作れますし、とにかく数をこなしているからスピードも速いんです。けど、なぜエルゴポックがメイドインジャパンにこだわるか。それは作っている人の意識の問題です。日本人は“すぎる”が付くくらい真面目です。その几帳面さから生まれるバッグと海外のものとを比較した時の差は見えない部分でわかる。エルゴポックのメイドインジャパンクオリティと海外製の決定的な違いはそういうところです」と話す。70年続いている工場が今できる最高のメイドインジャパン=エルゴポックのバッグなのだ。