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享保3年(1718年)創業。
「伝統の技を、未来に生かす」ことを信条としたものづくりを続ける「江戸屋」。
来年(2018年)には300周年になる刷毛・ブラシの専門店である。
「江戸屋」という屋号の歴史は古く、江戸時代(徳川8代将軍 吉宗の治世)に将軍家お抱えの刷毛師だった初代・利兵衛氏が、享保3年(1718年)に将軍家から「江戸屋」の屋号を賜り、江戸刷毛専門店として開業。のり、漆、染色などの刷毛を作り、屏風やふすま、障子などを作る道具として重宝されてきた歴史を持つ。
明治時代には、西洋化への時代の流れにあわせてブラシ作りもはじめ、江戸刷毛の技術を活かして、洋服ブラシや歯ブラシといった生活道具から船舶のデッキブラシや工業用の研磨ブラシなど多種多様な商品を生み出してきた。
今では、取り扱う刷毛やブラシ類は、3000種類に上るそうで、店の天井には無数の商品が掛けられ、独特の風情を醸している。「刷毛やブラシはあくまでも道具ですから、使う人の要望に合わせ、誠実に一本一本、手づくりしています」と話すように、歴史と伝統に裏打ちされながらも、新たな価値を生み出し続けている。
江戸屋の刷毛やブラシづくりにおいて使われる技術の中でも、豚や馬、山羊、猪等の天然の毛を、柄に空けた一つ一つの穴に手で植え込む「手植え」の技術が一番古く伝統あるもの。
植え込む毛を種類に応じて仕分けした後、整え、面取りをして開けておいた柄の穴に植え込んでいく。整えた毛を適量つまみ、二つに折り、あらかじめ柄の穴に通しておいたステンレスの線に引っ掛ける。「引き線」といわれるステンレスの線で毛を引っぱり、柄の穴に固定させる。さらに引き線を切らずに別の穴に通し、毛束を植え込む作業を同じ様に繰り返し行い、最後にブラシ自体をブラッシングをすることで、毛に絡まっているゴミや枝毛などの弱い毛を掻き出す。
手作業で120~130個ほどの穴へ植え込みを行うこの作業はすべて指先の感覚で行われるため、熟練の技術が必要。指先で最初につまんだ毛束の量が基準となり、その感覚を覚えることで一穴一穴に同量の毛を植え込んでいくことができるのだ。職人として60年以上の経験を誇る技が光る。江戸屋の刷毛やブラシは、こうした職人の誠意と技術に支えられている。
そんな江戸屋のものづくりに惹かれ、オリジナルの靴ブラシを別注しているのが、南青山の骨董通り沿いに店舗を構える靴磨き専門店「Brift H(ブリフトアッシュ)」だ。
年間1万足の靴磨きをおこなう同店。当然だが、靴磨きにおいて靴ブラシの役割は大きく、ホコリ払い用、クリーム用、コバ用、仕上げ用とあるが、特にクリームを均一に伸ばしていく際の磨きの早さ、高速で磨き込んでいくなどしていると、毛先が摩耗していく。磨きの動きも相まって5年間使用したものは見事なアール形状に減った状態になる(*画像2)。
一般的なものは毛が抜けてしまったり、毛先が広がってしまったりするが、江戸屋の手植えブラシは用途によって天然毛独特のコシや弾力を備え、さらに靴磨き用に改良された逸品。その使い心地は、手にしたものだけが感じられることだろう、職人が誠心込めてつくり上げた温もりが宿る。
ブラシを作る工程は一見単純そうに見える。しかし、「検品が命。焼印は責任の証なんです。昔からやっていることや、作っているモノは変えずに、職人を育てながら2人3脚でやってきた。ともに働く仲間、職人はとても重要な存在です。」と話すように、それこそが江戸時代から続いてきた技術、歴史の賜物であり、理由なのだ。
江戸屋の旗印は、『誠実』『良品』『奉仕』。
「また来てよ」と声をかけていただける人情。江戸より時代を超えて愛されてきた「江戸屋」のものづくり。丁寧で豊かな暮らしを送るツールのひとつとして、手にしてみてはいかがだろうか。
<撮影協力>
Brift H -ブリフトアッシュ-
〒107-0062
東京都港区南青山6-3-11 PAN南青山204
TEL : 03-3797-0373
営業時間 : 12:00PM-20:00PM
定休日: 火曜日
E-MAIL:info@brift-h.com